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のぞみが通っているのは、肢体不自由児を対象とした特別支援学校の「横須賀市立養護学校」です。 横須賀市立養護学校ホームページ 特別支援学校は、普通の小学校や中学校とは様々な点が違います。 毎日の通学は車いすのまま、介助員の方が同乗する送迎バスに乗って登下校します。 学校内は一切段差がなく、車いすで移動できるように一階建て、平屋の校舎です。 クラス編成は1クラス数名。複数の先生がひとつの学級を担当します。 看護師やPT(理学療法士)、OT(作業療法士)が常駐し、医療的なケアを含めて「からだ」や「サーキット」 など、運動機能改善の時間が授業の中にあります。 そのための施設も充実していて、「からだのへや」や「合同学習室」、「温水プール」が完備されています。 一般の方はもちろん、障害児の父兄の方も、よその特別支援学校のことはなかなかご存じないと思い、「横須賀市立養護学校」ってこんなに 素晴らしい特別な学校ですよぉ~とお伝えしたいと思い、学校への潜入取材を考えたのですが、娘からの大反対を受け残念ながら断念。 そこで、このページでは「横須賀市立養護学校が肢体不自由児の教育にどのように取り組んでいるか」を紹介させていただきます。 下記に掲載してあるのは、「独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所」が特別支援教育に関する情報の普及と共有のために開催している セミナーにおいて、過去に横須賀市立養護学校のS先生が発表されたものです。 普通学級の授業とは次元の違うレベルで、先生方が子どもたちと向き合っている様子をご理解いただけるのでは・・・と思います。 |
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Ⅰ はじめに 本校は、今年度から「授業」をテーマに校内研究を開始した。 ここではその研究の一部である重度・重複障害のある子どもに対する「集団の授業」を中心に報告したい。 1 学校の概要 本校は創立35年、横須賀市立では唯一の肢体不自由養護学校である。小・中学部からなり、横須賀市(人口42万)全域を学区としている。 教職員には、市単独措置で看護師(2名が毎日6時間)、PT(1~2名が週3日)、OT(1名が週1日)、介助員(4名が毎日)が配置されている。 ここ2・3年、近隣養護学校からの転入が相次ぎ、児童生徒が急増した。その影響が通学・給食・教室や施設・学校行事等に出ているが、これに 柔軟に対応して教育の質を維持・向上させるために、学校組織(指導・運営・研究)を大幅に変更し、現在は教育課程の整理・見直しに取り組ん でいる。 また、医療的ケアを必要とする児童生徒の顕著な増加への対応として、校内医療ケア体制を整えると共に、校外医療機関にも協力を要請し、 常時医療的ケアを必要とする児童生徒(特別クラス「1組」に編成)が安全に当該学年の学習活動に参加でいるよう努めている。 表1は、医療的ケアを必要とする児童・生徒の経年変化である。
10年程前から市内の学校との交流も実施し、学校間交流(年間十数回)は近隣の小・中学校・県立 養護学校と、学年やブロック単位で 行っている。居住地校交流(児童生徒1人の実施回数年間10~1回、相手校36校)は、小学部児童の73%、中学部生徒の62%が希望し、 希望者の100%が受け入れられている。 2 重度・重複障害のある児童生徒の状況 児童・生徒の状況は表2のとおりである。
表2 重度・重複障害のある児童生徒(2005年度)
57名中52名(91%)の児童生徒が知的障害を併せ持っており、障害は年々重複・重度化、多様化している。 3 重度・重複障害のある児童・生徒の教育課程 ⑴ 教育目標 本校の学校教育目標は、以下のとおりである。 ① 自らの障害を抱えつつ、自立し、社会と調和して暮らすための、基礎的な力を育成する。 ② 充実した授業を行い、地域と共生する学校づくりを推進する。 ⑵ 教育課程について 重度・重複障害のある児童・生徒の教育課程は、自立活動を中心に展開される。本校においても、自立活動の指導は、学校の教育活動 全体をとおして実施し、その中心となる授業は「学習のまとまり」に沿って行っている(表3)
表3 「学習のまとまり」
なお、各授業の名称については、さらに検討を重ねているところである。また、具体的な時間割の例は、表4のとおりである。 表4 時間割<例>
<小学部低学年ブロック>
<小学部高学年ブロック>
個別指導計画の作成には、児童・生徒に主として関わる教員があたるが、実施にあたってはクラス教員全員による合議を核にしている。 また、指導に関わる全ての教職員が組織的に関わることを目指して、作成・評価時のクラス会議に、養護教諭・栄養士・PT・OTが参加する。 Ⅱ 本校における研究の概要 本年度の校内研究のテーマは、5ブロック中3つのブロックが「集団の授業」である。 しかし、保護者による学校評価で、最も低い評価を受けたのが「集団の授業」であった。 授業について、保護者が求めていることは、授業の目標、自分の子どもにとっての学びの具体的な内容とその発達上の意義、次の段階への 移行のプロセスと見通し、授業の全体像などである。 “その日一日を楽しく過ごした”というだけではない具体的な内容を、説明する責任が学校にはある。 集団の授業には、当の子どもと、沢山の仲間が居て、変化に富んだ学習内容があり、沢山の教師も居る。 学びに必要な全てのものが揃っているように見える。 ところが実際には、その豊富なものを子ども一人一人の学びにつなげることには多くの工夫が求められる。 “豊富な学習内容”に富む「集団の授業」には、楽しい活動や新しい体験がある。 けれども内容が未消化におわり、「活動があって学びが無い」状態に陥ることも多い。 メインティーチャー、サブティーチャーは、「子どもと学びをつなげて、その瞬間を見取る」ための適切な役割分担が理解できているだろうか。 このような課題を克服するために「繰り返しや積み重ねを重視した集団の授業」(安定した学習環境の中で、仲間とともに小さなステップを 積み上げて困難を克服し、成就感を味わい、仲間からも認められたと、子ども自身が感ずる授業)をめざしている取組を、校内研究の中から 2課題について報告したい。 ------------------------------------------------------------- 研究1 「朝の会」の取組 1 研究のねらい 小学部低学年ブロック(表2参照)の集団の授業「あそび」は、「沢山の体験を通して、学校生活の楽しさを味わう」ことをねらい年間約20の 生活単元で構成している。繰り返しや積み重ねを重視した集団の授業を作りたいと考え「朝の会」をテーマとした。 2 児童の実態 子どもの実態は表5のとおりである。
表5 小学部低学年・3組の実態
3 研究の流れ ⑴ 子ども同士の関係性を重視した位置の配慮 2児が安心できる空間にするために、床に児童名を書いたテープを貼って各児の位置を固定した。 2児の位置は中央におき、仲間とのつながりを期待して、両サイドは人との関わりを好む児童D児とG児を配した。 教師の位置はT1~ T4である。 ⑵ 子どもの反応を読み取る教師の役割 T1が日直(リーダー)、T2はA児とB児、T3はC児とF児とG児、T4はD児とE児に働きかけて、表出の読み取りに努めた。 読み取りの確認のために以下のシートを作成した。
表6 ポイント確認シート
⑶ 「朝の会」における指導 教師は、排泄・水分補給・健康観察等、登校直後の「日常生活指導」を行いながら、1時間目の「かだい」として「朝の会の事前の仕事」を 指導する。 各係の仕事の分担は表8のとおりである。 また、朝の会の活動内容は表7のとおりである。
表7 朝の会活動内容
(時間10:00頃から約15分間)
表8 仕事分担
4 まとめ このような係分担方式にしたのは、子どもたちが個々の適性を活かして主体的に授業に参加できるようにするためではあったが、結果として 「朝の会」の時間短縮が図れ、次の時間への余裕を生んだ。 昨年度経験している2年生は係りが変わったが、2年生も1年生も皆自分の役割(係も日直も)を理解して意欲的に取り組み、友達の役割も 理解しているようである。 毎日の積み重ねによって、どの子も自分の役割が上手に出来るようになった。 ほとんどの子どもは日直の時に「次は誰が何をする」という「朝の会」の流れを理解していて、自主的にその子どもたちを指さしたり視線を 送ったりすることができるようになってきている。 理解に困難が予想されたB児も、「朝の会」の流れを徐々に“聞いている”様子が出てきており、呼名のときや係としてスイッチを押すときなど は、顔が上がり笑顔も見せるようになってきた。 また、視力が弱いA児は、よく友達の声を聞いており、自分の呼名や役割のときに声や笑顔で表出している。 私たちはこのやり取りを“主体的に参加している”姿ととらえ、毎日の指導の積み重ねの大切さを実感している。 ------------------------------------------------------------- 研究2 「リズム遊びの指導」の取組 1 研究のねらい 小学部高学年は、「あそび」を3つに分けている。 ① 「たいけんあそび(生活)」…身の回りにある自然現象・食生活・社会体験・行事等の体験を中心にしたもの ② 「かんかくあそび(図工)」…触覚・嗅覚刺激等を中心にしたもの ③ 「リズムあそび<プール>・<室内の活動>」…音楽と体を動かす刺激を中心にしたもの このように3つに分けた理由は、「教科学習を必要とする児童に「大きな集団の中で友達と活動する楽しさ」を味わいながら系統的な学習を させたいという思いがあったことと、新しいことに慣れ難い重度の児童には、繰り返しや積み重ねを重視した集団の授業」が効果的であると 感じていたからである。 2 児童の実態 児童の実態は表9のとおりである。
表9 児童の実態
3 研究の流れ 本年度は「リズムあそび」の「室内の活動」にテーマを設定した。 「リズムあそび」は6月~2月まで「プール」と「室内の活動」を同時に進行させている。 「プールにおける指導」は、比較的に指導体制にゆとりがあり、3年間の研究成果により、指導が充実してきている。 「室内の活動」は、人手をプール指導にとられることもあって指導面に余裕がなかった。 しかし、個性豊かな児童に、「プール指導」のような大きな刺激だけでなく、様々な刺激のある「室内の活動」は必要であろう。 厳しい指導体制の中でも、かかわりや授業展開や評価を工夫することによって系統的な指導を行い、もっと一人一人が楽しんで学ぶ授業に したいと考えチームで取り組んできた。
表10 2005年度個別指導計画№4 【授業の指導計画(リズムあそび)<室内の活動>】
上記計画の他に児童一人一人の目標を設定し、月1回の「研究日」と「授業研究」を使って研究を進めた。 今回の研究の方向について話し合いを持った。 体操・歌・楽器・遊具の題材で特にアプローチが必要と思われる児童を絞って考えてみることにした。 11月の研究会の記録を参照されたい(表11)。 回を重ねる毎に少しずつ改善し、落ち着いた授業展開が行われるようになり、児童全員が「プール」のために途中参加となっても、リズム 遊び「室内の動き」の授業の流れを理解できるようになった。
表11 研究会の記録
上記の児童について、教師のアプローチと子どもの変化を追跡できるよう、記録用紙(表12)を作成した。
表12 記録用紙
これらの記録を基に、指導者が関わりを工夫し、子どもの捉えかたを深めることが出来るようになると、それに応えるように児童の行動が 変化してきた。 下記はその例である。
12月16日の「やまゆり祭」で、高学年ブロックは児童全員で「キラキラぼし」を合奏した。 授業で積み重ねてきた練習の成果の発表は、子ども自身が大きな自信を感じるものとなった。 4 まとめ 表を作成し「教師のアプローチと子どもの変化」を追跡してみると、子どもを学びにつなげるための関わりが、今までいかに不足していたか に気づかされた。 また、関わりのしかたや子どもの捉え方を変えるなかで、環境(スモールステップで、条件を整える)が子どもに及ぼす影響の大きさを改めて 実感することができた。 ------------------------------------------------------------- Ⅲ おわりに 本校では、児童生徒の重度・重複化、多様化の中で、学校全体として「授業づくり」に取り組む研究体制を構築したばかりである。 日々の実践の中から、子どもたちへの指導の手がかりを求め、指導の効果を確認する手だてを工夫している。 本校では、重度で重複した障害のある子どもの指導において従来から大切にてきた、「開く(同僚・保護者・学校外)」、「支える(命・家庭・支え の輪)」、「つなぐ(子どもと子ども、子どもと社会、子どもと世界)」、の三つのキーワードの重要性について、再度確認し、全職員、全保護者、 地域とともに学校経営をしていきたい。 ------------------------------------------------------------- (参考文献) 1) 飯野順子・授業づくり研究会I&M:「障害の重い子の授業づくり」ジアース教育新社 2) 日本肢体不自由児協会:「肢体不自由教育173」 3) 横須賀市立池上中学校:「ともに学び合える学習集団育成のための学習指導の研究」 4)下村哲夫:「学校の条件」学陽書房 5)大瀬敏昭・佐藤学:「学校を変える」小学館 |
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